乳腺外科(乳腺外来)

更新日:2024年09月26日

乳腺外科から

乳腺外科部長 三輪 教子

 日本の乳がんの患者さんは年々増加しており、最近は9人に1人が生涯に罹患し、壮年期の女性の罹患数・死因ともに最多のがんです。こうした背景を踏まえ、当院でも2014年に乳腺外科を標榜しました。乳腺外科部長の三輪は、北播磨で唯一の女性の乳腺専門医(日本乳癌学会)であり、当院は北播磨で唯一の国指定のがん診療連携拠点病院として良質の乳がん診療を行っております。
 標榜以来、手術数・検診数ともに増えています。当科をご受診下さる理由は、女医であること、乳腺専門医として日本乳癌学会診療ガイドラインに則った良質の医療を提供できていること、北播磨で唯一の国指定のがん診療連携拠点病院として診断から治療(薬物療法、外科手術、放射線治療、進行再発乳がんの治療、緩和ケア)をすべて当院で行えるからであると思っております。
 2012年に着任後、乳がんの年間手術数は10例から着実に増え、2014年の年間手術数は40例を越え、2018年-2020年の年間平均手術数は36例となりました。コロナ下の2020年~2021年には減少しましたが、2022年には年間50件を越え、乳腺外科標榜以来最多となりました(下図)

手術件数

 検診も年々増加しており、2019年度には町ぐるみ検診・協会けんぽ・人間ドック・乳腺ドックを含めて過去最多の900人の乳がん検診を行いました。多くの病院とは異なり、当院では検診の際にマンモグラフィと合わせて視触診をしております。マンモグラフィのみの検診では、欠像や高濃度乳腺のために見落としの可能性があるためです。欠像とは、マンモグラフィでうまくはさめないために撮影できない乳房の部分のことをいいます。

 また、高濃度乳腺とは、40歳代等乳腺が厚いためにマンモグラフィでは見落としの可能性が高い乳房のことです。当院の乳がん検診の乳がん診断率は全国平均の2倍以上です(下図に日本乳癌検診学会の全国集計を示しています)。さらに、当院は精密検査実施機関基準を満たしております。検診・精査とも、安心してご受診ください。また、日曜日にも検診を受けられる、ジャパンマンモグラフィサンデー(JMS)を2019年度から開始しました。

乳がん発見率

 2015年4月より、折々の乳がんに関わるトピックス(乳腺外科トピックス)を発信しています(この項の最後に掲載しています)。ご参考になれば幸いです(文責 三輪)。

 以下に、当科の特徴や診療内容、遺伝相談外来、セカンドオピニオン外来、乳腺ドックについてご紹介しております。

診療科の特徴と診療内容

当科の大きな特徴は以下の6つです。

  1. 乳腺担当医・マンモグラフィやエコー検査技師(読影資格あり)・理学療法士・病棟薬剤師・外来化学療法専門看護師がすべて女性
  2. 日本乳癌学会・日本乳癌検診学会の精密検査実施機関基準を満たしています!
  3. 全国に先駆け、術後翌日からリハビリ+指導でリンパ浮腫はほとんどなし!
  4. 高い乳がん診断力~乳がん検診の乳がん発見率は平均の2倍以上!!
  5. 北播磨で唯一遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の遺伝相談外来を開設し、BRCA遺伝子検査を行っております。
  6. 院内外の他科多職種と密に連携したチーム医療を行っています(下図)。

当院の乳がん診療を支える5つの連携
 乳腺外科部長の三輪医師は、昭和大学病院で乳がんの薬物療法と緩和医療の研鑽を積み、2012年7月に着任以来、日本乳癌学会の診療ガイドラインに基づいて乳がんの診断および治療を行っています。昭和大学病院等、第一線の乳腺診療を行っている病院と連携を図るとともに、積極的に国内外の乳がん関連学会に参加・発表していち早く治療の進歩を知り、最先端の医療を地元西脇のアットホームな雰囲気のなかで提供できるように努めています。

 乳がんはほかのがんと異なり、比較的再発しやすく、早期で発見されても多くの場合に局所療法としての手術や放射線治療のみではなく、全身療法としての薬物療法が再発予防のために必要です。より良い予後のために、何よりも大切なことは、これらの治療法を、その患者さんの乳がんのタイプや広がり具合によって、最善の組み合わせで治療方針を立てることにあります。そのために最重要なのは治療方針を日本乳癌学会の診療ガイドラインに則って立てることです。三輪医師は、2020年現在最新の日本乳癌学会診療ガイドラインの監修責任者である、昭和大学病院乳腺外科中村清吾教授のもとで診療ガイドラインに則った方針の立て方と多職種によるチーム医療でこれを安全に不安少なく実践することを学んで当院に赴任しました。現在も当院乳腺外科は、日本乳癌学会関連施設として、昭和大学病院乳腺外科の指導を頂いております。

(日本乳癌学会診療ガイドライン http://jbcs.gr.jp/guidline/2018/index/

患者さんのための乳がん診療ガイドライン http://jbcs.gr.jp/guidline/p2019/ )

 乳がんの治療は、手術、再発予防の薬物療法、放射線療法の3つの柱で集学的に行いますが、当院は放射線治療施設を併設しており、診断から治療まで一貫して当院で治療を行っています。
 さらに、リハビリテーション科と連携を密にし、手術入院時にリハビリテーションを開始するとともに、病棟ではビデオで乳がんについて学んでいただくなど、地域に根差した中規模病院ならではの、患者さんおひとりおひとりに合わせたきめ細かい医療が、当院での乳腺診療の特徴です(7番目の特徴です)。

 当地方は高齢化が進んでおり、都市部と比べて乳がんの患者さんの平均年齢は10歳以上高齢です(三輪ら、日本医療マネンジメント学会、2019年)。そのため、高齢者や基礎疾患をもつ患者さんに特に考慮した安心な医療の提供を心がけています。お気軽にご相談ください。

乳がんと診断され、これから治療を始める方へ

 乳がんの患者さんの99%は女性です。また、肺がんや大腸がんなどほかのがんの患者さんと比べて若年であることが多く、また、根治目的であっても手術に加えて薬物療法が必要となることも少なくありません。薬物療法の副作用で脱毛したり、手術によってボディイメージが変わることがあります。また、診断時の年齢によっては、妊孕性について考えなくてはならない場合もあります。兵庫県ではできる限り安心して治療を受けて頂くために、「がん患者アピアランス(外観)ケア、サポート」および「兵庫県小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業」を行っています。これらは、乳がん患者さんのみではなく、性別を問わず、がん治療を受ける方が対象となっています(助成を受けるためには一定の要件を満たす必要があります)。

1.がん患者アピアランス(外観)ケア、サポートについて

 当院ホームページ8月25日付のお知らせにも掲載させて頂きましたように、兵庫県では医療用ウィッグや乳房補正具の購入費用の一部を助成する「がん患者アピアランスサポート事業」を市町主体で実施しています。近隣では、西脇市・多可町・丹波市が実施しております。詳しくは、兵庫県がん患者アピアランスサポート事業について(PDFファイル:161.9KB)をご覧ください。

 がん治療に伴うアピアランス(外観)の変化、たとえば抗がん剤の副作用による脱毛や乳房の手術などにより、外見に変化がおこることがあります。外見が変化することで、今まで通りの生活に不安を持たれる方のために、心理的な負担を軽減するとともに、就労や社会参加を応援し、療養生活がよりよいものになるためのサポート事業です。

 該当市町村在住で助成をご希望の方は、乳腺外科又は「がん相談支援センター」へご相談ください。書類をご用意しております。

2.兵庫県小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業

 兵庫県では、令和3年4月1日から抗がん剤や放射線治療の影響で将来の妊娠が見込めなくなるがん患者等の方(対象となる治療の凍結保存時に43歳未満)に対し、妊孕性温存治療費の助成を行っています。詳しくは、

兵庫県/兵庫県小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業 (hyogo.lg.jp)をご覧ください。

乳がん検診で要精査となった方へ

 日本乳癌学会・日本乳癌検診学会は、「精密検査実施機関における的確な診断を通じ、乳がんの早期発見と適切な治療を保障されることを目的として」平成26年7月に乳がん検診の精密検査実施機関基準を定めています。詳しくは下記資料をご覧ください。
乳がん検診精密検査実施機関基準についての資料

 当院は、この精密検査実施機関基準を満たしており、さらに、診察・画像検査ともにすべて女性(乳腺専門医・画像読影資格のある検査技師)が担当しています。安心してご来院ください。

遺伝相談外来 毎週火曜日

 乳がんは、ほかのがんと比べて遺伝性が疑われることが多く(~15%)、代表的な遺伝性乳がんは遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)であり、その主要な責任遺伝子はBRCA1/2です。これらの遺伝子に病的な異常があると、ご自身が生涯に乳がんや卵巣がんになる確率が平均よりもはるかに高くなるのみでなく、ご家族にもその可能性が出てきます。HBOCであった場合、乳がんの治療方針にもかかわってきますし、発症前の予防的な乳房や卵巣の切除術が2020年4月より保険適応となりました。当院では、家族歴等のためにHBOCを心配される患者さんの相談窓口として、北播磨で唯一の遺伝相談外来を開設しています。カウンセリングやBRCA遺伝子検査が可能です。2020年4月より、HBOCの可能性のある乳がんや卵巣がんに罹患の患者さんについては、BRCA検査が保険適応になりました。卵巣がんは早期発見が困難ながん種であり、特に乳がんの患者さんがBRCA検査で卵巣がんのリスクを知ることは非常に有意義であり、この目的のご相談・遺伝子検査が増えております。お気軽にご相談ください。

セカンドオピニオン外来 毎週水曜日

 当院は開設以来ずっと日本乳癌学会の診療ガイドラインに則った標準治療を行ってきました。また、日本乳癌学会関連施設として、昭和大学病院乳腺外科(中村清吾教授)にご指導いただき、地方にあって最先端の医療をアットホームな雰囲気で提供しております。新薬が発売となれば適応患者さんにいち早くお知らせし、処方を始めております。例えば昨年12月15日市販のパルボシクリブの処方を1月より開始しました。そして、昭和大学を中心とした専門医のつながりで新薬の副作用等についても情報を交換し、患者さんに不安少なく治療を受けていただけるように心がけております。 乳がんに限らず、診療ガイドラインに則った標準治療が最も効果が期待でき、かつ安全に行うことができるため、患者さんの予後がよくなります。しかし、乳腺診療を専門にする医師が全国的に不足しており、標準治療が困難な場合も少なくありません。標準治療からかけ離れた治療は、危険であり、予後不良につながり、患者さんへの不利益が生じえます。こうした背景から、セカンドオピニオン外来を開設しました。お気軽にご相談ください。

乳腺ドック 毎週木曜日

 日本人は平均的に乳腺密度の濃い女性が多く、マンモグラフィのみでは早期診断が困難な場合があり、特に40代等若年の場合にはマンモグラフィに加えて超音波検査を併用することで早期発見率が改善されることが明らかにされました。この日本発大規模臨床試験(J-START)の結果を受けて日本乳癌検診学会に総合判定委員会が設けられ、マンモグラフィと超音波検査の総合判定基準が定められました。当院はこの基準に則り、マンモグラフィをまず行い、それを超音波技師が参考にしつつ超音波検査を行い、それらの結果を乳腺専門医の三輪が総合判定しています。単にマンモグラフィと超音波検査を両方やる、ということは総合判定ではありません。また、近年、日本人の遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の罹患率が欧米人と同等であることが分かってきましたので、乳腺ドックでは、HBOCについての簡単なカウンセリングも行っております。乳房の健康管理にぜひお役立てください。

進行・再発乳がんへの取組み

 三輪医師は、前任の昭和大学病院で特に進行・再発乳がん(ABC)の診断・治療・緩和ケアについて学んできた背景から、ABC診療が使命であると考えております。進行・再発乳がんの世界初の国際学会で研究報告し、その折のレポートをインターネット上で公開しています(詳細は以下のPDF)。
再発乳がんの世界初の国際学会での発表レポート(PDFファイル:967.3KB)
 また、三輪医師は、進行・再発乳がん国際連盟(ABC Global Alliance)とともに活動し、進行乳がん(ABC)患者さんの予後とQOL改善を目指して活動しており、連盟の憲章の日本語版を担当しております(詳細は以下のPDF)。
ABC国際連盟 憲章(日本語版)(PDFファイル、https://www.abcglobalalliance.org/abc-global-charter-2018-translations/ )

乳がん患者会「はなみずきの会」について

 乳がんは経過の長い病気であり、そのために患者さんは長きにわたって病気と向き合う必要があります。患者さん同士の励ましあいや医療者を交えた交流によって、不安少なく治療を受けていただくことが予後改善の大きな力となります。全国で乳がん患者会は多数ありましたが北播磨地方にはなく、三輪医師は北播磨初の乳がん患者会である「はなみずきの会」を2010年に立ち上げ、代表世話人として当院を中心に患者さんの不安を少しでも軽減するための活動を行っています。正式な発足と初回の患者会の様子が神戸新聞に掲載されました。「はなみずきの会」は、治療している病院を限らない全国でもユニークな患者会です。定例会・歩こう会・にしわき乳がん市民公開講座・がんについての啓蒙活動を行っております。詳しくは乳腺外科トピックスをご参照ください(この項の最後に掲載しています)。
 はなみずきの会は、2013年度より連続3回公益財団法人正力厚生会のがん患者団体助成対象に選ばれ、おかげさまで「にしわき乳がん市民公開講座」は地元に根付き、第6回目の2018年度には、日本対がん協会会長の垣添忠生先生に来ていただきました。

治療実績

 2019年~2020年の新規乳がん患者数は50人、術後の治療・経過観察中が約150人、進行・再発乳がん治療数が約30人、年間平均化学療法数(延べ)は約500件と年々増加しています。このほか良性疾患、乳がん検診要精査、男性乳がん、女性化乳房症、乳腺炎等、乳腺疾患全般を診療しています。乳腺手術数については、この項はじめのグラフをご覧ください。

地域医療機関の先生方へ

 当科は、日本の乳がん診療をリードする医療者と連携を取って最先端の医療を行っています。遺伝性乳がんについても前任病院で経験があり、ぜひご相談ください。三輪医師は、西脇病院緩和外来の最初の担当医であり、その後も緩和医療について研鑽を積むとともに、緩和指導者講習を修了しています。現在も緩和ケアチームのメンバーであり、乳がん終末期にあたっての緩和的薬物療法や疼痛コントロールについてお悩みであれば、ぜひご相談ください。

人知れず悩んでいる患者さんへ

 しこりを自覚しているが、何となく病院に行くのが怖い、と1日伸ばしになさっていませんか?ほとんどの場合、ご自身で思ってらっしゃるよりも病状が深刻ではないことが多いものです。どうか勇気を出してご受診下さい。心からお待ちしております。

医師紹介

乳腺外科医師紹介

医師

役職

資格

三輪 教子

部長

日本乳癌学会乳腺専門医
日本乳癌学会乳腺認定医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
日本内科学会認定内科医
検診マンモグラフィ読影認定医
検診乳房超音波読影認定医
家族性腫瘍コーディネーター
遺伝性腫瘍コーディネーター
「緩和ケアの基本教育に関する指導者研修会」修了
「兵庫県緩和ケアフォローアップ研修会」修了
TNT(Total Nutritional Therapy Course)研修会修了
日本乳癌検診学会「第1回総合判定講習会」修了
新リンパ浮腫研修修了試験合格

 カンファレンスの様子

乳腺外科のトピックス

関連リンク

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