大腿骨近位部骨折(頚部骨折と転子部骨折)の治療について

更新日:2022年08月01日

大腿骨近位部骨折(頚部骨折と転子部骨折)とは

 高齢者は、交通事故や転落事故などのような大きな衝撃を受けなくても、転倒などの比較的軽微な外力で骨折を起こしてしまいます。これは骨粗鬆症によって骨の強度が低下してしまったことが原因です。また、寝たきりやそれに近い状態になっている人では、骨の強さはさらに弱くなっていて、おむつを交換する時に骨折をおこしてしまうこともまれではありません。骨粗鬆症は女性に圧倒的に多い疾患ですので、大腿骨頚部骨折や大腿骨転子部骨折は、高齢女性に好発します。男女比は約1:4です。受傷原因として最も多いのは転倒です。高齢になると運動能力が低下したり、視力障害を合併したりすることが転倒しやすくなることの一因です。

 この骨折は『寝たきり』になる一因でもあり、また認知症の悪化や全身状態への影響(肺炎・尿路感染症・褥瘡形成など)を来たし致命的になりえる骨折です。そのため、多くの場合早めに手術をして早期に離床をすることが目標になります。

症状について

症状

 太ももの付け根の部分が痛み、立つことや歩くことができなくなります。認知症を合併していると、痛みをうまく表現できずに数日経過してから整形外科を受診して診断される場合もあります。転倒などをしていなくても太ももの付け根の痛みを訴えられたり、しきりに太ももの付け根を触って顔をゆがめているなどの症状があれば、整形外科を受診してください。

診断について

 多くの場合はCT検査で診断がつきますが、骨折のずれが非常に小さいとMRI検査で診断されることもあります。

手術について

 大腿骨頚部骨折の手術では、骨接合術か人工骨頭置換術かのいずれかが行われるのが一般的です。骨折部が大きくずれている場合には人工骨頭置換術、あまりずれていない場合には骨接合術を選択しています。

 大腿骨転子部骨折の手術では、チタン製の“髄内釘”と呼ばれる内固定材料で骨折部分を固定する骨接合術を行います。

骨接合術

大腿骨頚部骨折(左:骨接合術、右:人工骨頭置換術)

骨接合術

大腿骨転子部骨折(骨接合術(髄内釘))

 受傷から早期に手術を行いリハビリテーションを開始することで、生命予後や機能予後が改善すると言われており、欧米では48時間以内の手術が推奨されています。日本でも早期手術の有効性が報告されていますが、困難なことが多いとされています。当院では、2017年から整形外科と麻酔科を中心とした当院独自の『周術期包括的集学的システム』を導入しており、導入以降、手術までの待機期間の平均は0.5日と短縮されました。90%近くの患者さんに、48時間以内の早期手術を行っており、受傷前の活動レベルまで回復することを目標としています。

当院の『周術期包括的集学的システム』

 大腿骨近位部骨折の術後に発症しやすい合併症(肺炎・尿路感染症・心筋梗塞など)を軽減するために、原因となるリスク因子を術前に評価し、全身状態の最適化を行ってから手術に臨んでいます。術後は管理栄養士を中心とした「栄養サポートチーム」が早期に栄養管理を行い、病棟看護師と理学療法士が協働し早期リハビリを行っています。また、薬剤師・内科医が二次骨折予防のための骨粗鬆症治療への介入を行うなど多職種によるチーム医療を行っているのが特徴です。

地域連携クリニカルパスで切れ目のない最善の連携医療を提供

 一般的に、急性期病院から回復期病院を経て早期に自宅に帰れるような治療・リハビリの流れをあらかじめ決めた診療計画表のことを地域連携クリニカルパス(地域連携パス)と呼んでいます。地域にある医療機関の中で、手術・術後の管理を重点的に行う『急性期病院』、リハビリを中心に行う『回復期病院』、自宅に帰られてからのフォローを行う『維持期かかりつけ医』が互いに連携・分担し、同じ治療方針のもと、それぞれの特徴を生かした医療を提供する仕組みです。

 北播磨地区にある医療機関の中で『大腿骨近位部骨折』において、当院は『急性期病院』の役割を担い、この地域連携パスを用いることで近隣施設と連携して、患者さんに安心して治療・リハビリテーションを受けていただけるように取り組んでいます。

 ご質問がございましたら、遠慮なく医師やスタッフまでお問い合わせください。

表紙

 大腿骨近位部骨折早期手術の取り組みに関する論文が『全国自治体病院協議会雑誌』に掲載され、整形外科、麻酔科を中心とした取り組みを支える多職種チームが表紙を飾ることになりました。

この記事に関するお問い合わせ先

西脇病院 事務局 医事課
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