外科
外科の理念・特徴
当院は、がん診療連携拠点病院として各種のがんの診断、治療及び緩和医療に取り組んでいます。当科では、さまざまな悪性疾患に対して、ガイドラインに従い内科医、放射線科医らと連携・協力しつつ、診断・治療をおこなっています。いわゆる大規模病院と同じ標準治療をを行うことが可能です。また、当院は中規模病院ならではのフットワークと横のつながり(診療科同士の連携)の良さを生かして、迅速な診断、治療(手術待機時間などが短い)を行います。また、悪性疾患以外でも代表的な外科的疾患である、胆石・胆のう炎、鼠径ヘルニア、虫垂炎などを中心とした手術治療実績があり、患者さまのからだに負担の少ない低侵襲な腹腔鏡手術を行っています。救急医療では交通外傷を中心に、外科系救急疾患に日々対応しています。
これからも北播磨地区のみなさまに当院を選んでいただけるよう、そしてこの地域の医療に貢献すべく、外科スタッフ一同努力してまいりますのでよろしくお願い申し上げます。
外科主任部長 伊藤卓資
各疾患に対しての治療
3Dシステムを用いた安全で、精密な腹腔鏡手術
2017年より、3Dシステムを用いた腹腔鏡システムを導入し、精密でかつ安全な腹腔鏡手術を行っています。手術は定型化(すべての術者が同じ手順、同じ機器を用いておこなう)され、安全に、合併症の低下、在院日数の減少につながっており、患者さまの安全に寄与しています。
安全な全身麻酔手術
昨今の患者さまの高齢化により、手術・麻酔のリスクが高まっています。全身麻酔の手術は、心肺機能に負担がかかるため、手術前の慎重なリスク評価が非常に重要です。そのため、当科ではリスクのある方には循環器内科、呼吸器内科を受診していただき、必要であれば心疾患の術前治療(心臓カテーテル治療など)を行います。その後、麻酔科診察にて最終的なリスク評価などを経て、安全な麻酔・手術を実施しています。
悪性疾患に対する治療
胃がん
当院では、事前のリスク診断にて内視鏡的切除可能である場合は、内科で内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を行います。内視鏡的治療も年々拡がっており、胃がんに対しての外科手術が少なくなってきている状況です(全国的な傾向)。患者さまにとっては、切らずに済むので朗報であります。
外科的手術の適応となった場合、術前診断を慎重に行った上でガイドラインに従い、cStage1.胃がんに対しては、低侵襲(からだに負担の少ない)治療である、腹腔鏡下幽門側胃切除術、腹腔鏡下胃全摘術を行っています。また、cStage2.~3.胃がんに対しては開腹幽門側胃切除術、開腹胃全摘術を行います。今後は低侵襲治療である腹腔鏡手術の適応が拡がっていく可能性があり、当科はそれに従っていく予定です。また、Stage4.胃がん・切除不能胃がんに対しては、日本臨床腫瘍学会指導医と専門医の在籍する当院内科と相談しつつ、化学療法を実施しています。
大腸がん
近年増加傾向にある大腸がんは、胃がんと同様に、ポリープがんに対しては内視鏡的粘膜切除術(EMR)を行っています。大きいポリープ(LST:側方発育型腫瘍など)には、当院内科で、胃と同様、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が行われます。この影響で、外科手術実績の減少していますが、手術せずに済むというのは患者さまにとって大きなメリットとなっています。ポリープがんもガイドラインに従い、粘膜下層への浸潤等により、外科手術が必要になります。これは当院の内科・外科での共通の認識を持って治療内容が決定されます。外科手術適応となった大腸がんに対しては、基本的に全例腹腔鏡下手術を行います。また、肛門に近い、従来では直腸切断術となった症例では、肛門温存の手術を行うことができます。症例によっては、人工肛門造設となりますが、当院にはストーマ管理のプロである、「皮膚・排泄ケア認定看護師」が2人おり、バックアップ体制は万全です。また、胃がんと同様、化学療法(抗がん剤による治療)が必要な場合は、内科と相談しつつ、治療を実施していきます。
肝がん
転移性肝がん、原発性肝がんに対して、肝切除を行っています。肝葉切除から、部分切除まで、幅広く対応しています。
胆嚢がん
ガイドラインに従い、胆嚢摘出+肝床切除+所属リンパ節郭清手術を行っています。
悪性疾患以外に対する治療
鼠径ヘルニア
腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術(TAPP法あるいはTEP法)を積極的に行っています。2012年より腹腔鏡手術をおこなっており、下腹部に3か所孔(あな)をあけて行います。術後の疼痛も少なく、平均4日間の入院です。再発率は過去5年間ゼロで、非常に満足度の高い手術です。
胆石・胆のう炎
積極的に腹腔鏡下胆のう摘出術を行っています。
急性虫垂炎
積極的に腹腔鏡下虫垂切除術を行っています。
腸閉塞(イレウス)
絞扼(こうやく:腸がねじれている)が疑われる場合は、緊急にて開腹手術を行います。(条件が合えば、腹腔鏡手術で行う場合もあります。)
直腸脱
腹腔鏡下直腸固定術をおこなっておりますが、再発率はゼロで、非常に満足度の高い手術です。
CVポート造設
局所麻酔下に、内頸静脈アプローチにて前胸部皮下に造設しています。年間約100例行っており、地域の在宅支援に貢献しています。
その他、食道裂孔ヘルニア、肝嚢胞、脾臓摘出術などを安全な腹腔鏡下手術で行っています。
地域医療機関の先生方へ
当科は、365日、24時間宅直体制をとっており、いつでもご連絡いただければ、迅速に対応させていただきます。何かわれわれにできることがあれば、いつでもご連絡いただければありがたく存じます。
初診、入院治療から退院、在宅治療まで、途切れのない通常診療、がん診療、および緩和ケアを目指し、先生方とともに患者さまを支えていきたいと思います。
手術実績(2023年1月~12月)
総手術件数 319例、全身麻酔手術305例、腹腔鏡下手術171例(中心静脈ポート造設は除く)
疾患名 |
件数 |
術式(うち腹腔鏡手術) |
---|---|---|
胃がん |
15 |
幽門側胃切除7(5) 胃全摘8(4) |
直腸がん |
15 |
前方切除7(7) 腹会陰式直腸切断2(2) ハルトマン手術6(5) |
結腸がん |
38 |
結腸切除36(33) ハルトマン手術2(0) |
乳腺 |
52 |
乳房全摘44(内、センチネルリンパ節生検27) 乳房部分切除8(内、センチネルリンパ節生検7)
|
胆石 |
67 |
胆嚢摘出術67(65) |
痔核・痔瘻 直腸脱 肛門周囲膿瘍 |
6 |
痔核根治術1 直腸脱手術1(1) 肛門周囲膿瘍手術4 |
虫垂炎 |
19 |
虫垂炎手術19(16) |
中心静脈ポート造設 |
68 |
|
リンパ節生検 |
15 |
リンパ節生検15(0) |
人工肛門手術 |
8 |
人工肛門造設術4(2) 人工肛門閉鎖術4(0) |
上部消化管穿孔 |
4 |
胃十二指腸潰瘍手術4(0) |
上部良性疾患 |
3 |
胃局所切除3(2) |
下部消化管穿孔 |
3 |
小腸・大腸穿孔手術3(0) |
下部良性疾患 |
1 |
小腸切除3(0) |
肝臓 |
0 |
|
胆嚢(悪性) |
1 |
胆嚢がん手術1(0) |
腸閉塞(イレウス) |
9 |
腸閉塞手術9(1) |
ヘルニア手術 |
68 |
小児そけいヘルニア2(0) 成人そけいヘルニア54(TEP法:35,TAPP法:12) その他のヘルニア2(2) |
食道裂孔ヘルニア |
0 |
Nissen手術0(0) |
その他 | 10 |
NCDデータベース事業への参加
当院は、PDF 一般社団法人National Clinical Database のデータベース事業に参加しています。
一般社団法人National Clinical Database (PDFファイル: 1.1MB)
医師紹介
伊藤 卓資
- 副院長
- 外科主任部長
- 医療安全管理室長
資格
- 医学博士
- 日本外科学会専門医・指導医
- 日本消化器外科学会専門医・指導医
- 日本消化器病学会専門医・指導医
- 日本がん治療認定機構認定医
- 検診マンモグラフィ読影認定医
岸 真示
- 外科部長
資格
- 医学博士
- 日本外科学会専門医・指導医
- 日本消化器病学会専門医・指導医
- 日本消化器外科学会専門医・指導医
- 日本静脈経腸栄養学会 TNTコース修了
白神 直人
外科医員
中口 雄太
外科医員
認定施設、教育について
- 日本外科学会外科専門医制度関連施設
- 日本消化器外科学会専門医制度指定修練施設(認定施設)
- 日本乳癌学会認定医・専門医制度関連施設
- 日本消化器病学会専門医制度認定施設
- 日本がん治療認定医機構認定研修施設
- 日本消化器内視鏡学会指導施設
- 日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究会登録施設
- 地域がん診療連携拠点病院
- 兵庫県北播磨災害拠点病院
- 臨床研修指定病院
更新日:2024年05月16日