心のスケッチ(2026年度)

更新日:2026年06月01日

子どもたちが教えてくれた、大切なこと

 私が以前勤めていた小学校のいじめ防止基本方針には、「さまざまな個性を持つ子どもたちが存在するから学校は生き生きとしている」と記されていました。
 教室には、人前で話すのが得意な子もいれば、じっくり考えてから言葉にする子もいます。また、友達と一緒に過ごすことが好きな子もいれば、一人の時間を大切にする子もいます。一人一人違いはありますが、どの子にもそれぞれの良さがあります。
 こうした違いが肯定的に認められると、子どもたちは安心して自分らしく過ごすことができます。しかし、違いが受け入れられない雰囲気の中では、自分の思いを言葉にすることが難しくなってしまうこともあります。だからこそ学校では、一人一人の感じ方や考え方を大切にし、心穏やかに伸び伸び過ごせる環境づくりが欠かせないものとなります。
 学校では、子どもたちのさまざまな姿を目にします。友達が失敗して落ち込んでいるときに、何も言わずにそっと寄り添う子もいれば、自分とは違う考えに「そういう考えもあるね」と受け止め、耳を傾ける子もいます。こうした日常から、子どもたちは共に思いやることを自然に学んでいるのではないでしょうか。
 私たち大人の社会にも、さまざまな考え方や生き方を持つ人がいます。教室での子どもたちの姿は、違いを認め合い、支え合いながら生きていくことの大切さを大人にも教えてくれているように思います。誰もが「このままの自分でいい」と感じることができ、生き生きと暮らせる社会をみんなで作っていきたいものです。

父のドキドキワクワク

 私は帰省するたび、父と釣りに行くのが恒例となっています。父はいつも私が使う釣りざおや、道具の準備をして待ってくれています。父は私が幼い頃から、休みになるたびに釣りに連れて行ってくれました。今も一人で釣りに出掛けては、慣れないスマートフォンを使って釣果を伝えてくれます。そんな姿を見るたびに、年齢を重ねても熱中できるものがある父をうらやましく感じることがあります。
 令和7年9月現在、日本の高齢者人口は3,619万人に上り、総人口に占める割合は過去最高の29.4%となっています。高齢者が尊厳を保ち、安心して暮らせる社会の実現が求められる中、豊かな知識や経験を生かして、仕事や地域活動に積極的に参加する高齢者が増えており、働く意欲のある高齢者の雇用を推進する企業も着実に増えています。
 80歳で3度目のエベレスト登頂を成し遂げた三浦雄一郎さんは、年齢にとらわれず挑戦を続ける理由を問われ、「エベレストが私にとって一番ドキドキワクワクできる場所だからです」と答えています。その「ドキドキワクワク」する気持ちは、他者との比較や優劣とは無関係な自分の心の感覚です。誰もが自分らしく輝ける社会を実現するためのヒントは、こうした高揚感や好奇心の中にあるのかもしれません。
 かつて、父が持ってくれていた釣りざおや道具は、いつしか私が持つようになりました。それでも、釣りに出掛けるときの父の生き生きとした姿は、今も昔も変わりません。年齢にとらわれず、身近な関心や高揚感を原動力に、地域や社会と関わっていくことが、誰もが自分らしく生きられる社会づくりの第一歩になるのではないでしょうか。

歩み始める人へ ~いつも隣に多くの人が~

 4月を迎え、自分は何を大切にし、どんなことに力を注ぐのか、考える人も多いと思います。

 皆さんはご存じでしょうか。ヘレンケラーが尊敬する日本の偉人として紹介した塙保己一を。塙保己一は江戸時代後期に活躍した全盲の学者です。日本のさまざまな分野の貴重な文献を集め、正しいものだけを種類別に編纂。「自分の道はこれしかない」と学問の夢を諦めず努力しました。目が見えないため、教師の話や人が読んでくれた内容を耳で聞いて暗記しました。この頑張りには、「好きな道を目指すのは結構なこと」と励ます温かい師匠の言葉や周りの人々の理解と協力がありました。

 私たちの周りには、困難を抱えながらも懸命に生きている人がいます。そして自尊心を失わず、夢や希望に向かって努力を続けている彼らの隣には、理解ある誰かの存在があると思われ ます。「あの人のあの言葉があったから、一歩踏み出せた」という経験をした人はたくさんいるのではないでしょうか。気が付けば、多くの人に支えられていたと自覚することがあります。

 人は、人とのつながりの中で成長していくものだと思います。当たり前のようですが、私たちは普段、その大切さを意識しながら励まし合 ったり信頼関係を築いたりする機会が意外と少ないのかもしれません。だからこそ、この時期から、隣の誰かを意識して歩みを進めてみてはいかがでしょうか。

 「若いときは自分のために時間を使い、年を重ねると他の人に時間を使うように」と、ある方が語りました。西脇市には「温かな人情」が日々の暮らしの中に感じられます。これからもその良さを大切にしながら、他者を思いやる心を持ち続けていきたいものです。

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