心のスケッチ(2024年度)
子どもが安心して暮らせる社会に【3月号】
「ケアリーバー」という言葉をご存知でしょうか。社会には虐待や貧困、死別などさまざまな理由で保護者と一緒に暮らせず、児童養護施設や里親など、社会的擁護の下で暮らしている子どもたちがいます。その社会的擁護から離れた子どもや若者を「ケアリーバー」と呼びます。社会的擁護の現状や実態を知る人は少なく、無理解や偏見などにより、ケアリーバーが進学や就職などの際にさまざまな困難に直面しています。
「ケアリーバーという言葉なんて聞いたこともないし、周りにいないので自分には関係ない」と思われる方もいるかもしれません。しかし人権問題を学んだり考えたりするとき、決して他人事とせず自分事として受け止め、向き合う姿勢が大切であるといわれています。一人一人がこの問題に向き合うことで、子どもをはじめ、誰もが尊重されるまちづくりにつながるのではないでしょうか。
今年度、兵庫県と公益財団法人兵庫県人権啓発協会は「社会におけるこどもの人権~こどもが安心して暮らせる社会の実現をめざして~」をテーマに、人権啓発映像教材DVD「あなたのいる庭(出演=南野陽子さんほか)」を制作しました。この作品には、児童養護施設で暮らす子どもやケアリーバーなどが描かれています。
地域や職場などの皆さんで視聴し、社会的養護下の子どもやケアリーバーについて学び、自分事として考える機会としていただければうれしいです。
インターネットとの付き合い方を考える【2月号】
この資料をご覧ください。これは兵庫県教育委員会が小学1、2年生用に作成した人権教育資料の一部です。上の図は本人の承諾を得ず勝手に動画撮影をすることについて、下の図は本人の承諾を得ず勝手に画像を編集して公開することについての内容です。
このようなインターネットとの付き合い方を考える内容は、小中学生全学年の人権教育資料に掲載があり、県教育委員会がインターネット上においても子どもたちを守りたいという強い思いが感じられます。この背景にはインターネットの普及に伴って、プライバシーの侵害や差別を助長する表現など、人権に関わる多くの問題が発生しているという厳しい現実があります。
今後、私たちはインターネットとの関わりが一層身近になります。絶えず進歩する情報技術を注視しつつ、私たち全員が共に学んでいく必要があるのではないでしょうか。

出典:小学校低学年用人権教育資料『ほほえみ』
「ちょっと まって! ~みんな えがおに なれるかな?~」9項
(令和4年3月兵庫県教育委員会発行)
誰もが安心して暮らせるまちづくりを【1月号】
お正月はどの国でも一年の始まりを祝うおめでたい日です。しかし、国が変わればその時期やお祝い方法もさまざまです。日本のお正月は新暦の1月1日ですが、アジアの国々を調べてみると、ベトナムではテトという旧暦のお正月で、新暦でいう2月上旬になることが多いようです。ミャンマーは4月、インドネシアでは宗教によって4回もお正月があるようです。
さて、市内でも外国人を見かける機会が増えていると感じる方も多いのではないでしょうか。西脇市では昨年11月1日現在で783人、514世帯の外国人が生活されています。中でも10年前と比べると、ベトナム人が約10倍の300人近く生活されています。
近所に外国人が住まわれた場合、多くの方が友好的に関わられると思いますが、「騒がれるのでは」とか、「ルールを守ってもらえないのでは」などと考える方もいるかもしれません。それらの原因として、まだ十分に日本語を習得しておらず、連絡や案内が理解できなかったり、文化や習慣の違いで、行き違いが起きたりすることへの不安が考えられます。
西脇市に住む外国人のために、みどり園では「ごみのしゅるいともちだしルール」と題した案内を、英語や韓国語、ベトナム語、中国語、ミャンマー語で発信しています。また、日本語や日常生活のルールなどを教える「にほんご教室」が市国際親善交流協会主催で運営されています。
外国から来て、不安や不便を感じながら生活している方やその周囲の方が安全で安心して生活できる環境づくりは、人権が尊重され誰もが安心して暮らせる西脇市づくりにつながっていくことでしょう。
私たちの権利【12月号】
12月4日~10日は法務省の人権擁護機関が定める人権週間です。人権週間は、世界人権宣言が採択された12月10日を最終日とした1週間と定められており、各関係機関や団体が協力し、全国的に人権啓発活動が行われます。西脇市においても、人権擁護委員らが市内各所で街頭啓発活動を行ったり、市人権教育協議会が市民じんけんセミナーを開催したりします。
世界人権宣言は「第2次世界大戦の惨劇を二度と繰り返さない」「世界各国が協力して人権を守る努力をしなければならない」という決意から誕生したと言われています。これまでに500以上の多様な言語に翻訳され、最も多くの言語に訳された文書でもあります。例えば、日本政府は第1条を次のように訳しています。
第1条 すべての人間は、生れながらにして自由であり、
かつ、尊厳と権利とについて平等である。
人間は、理性と良心とを授けられており、
互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。
また、詩人の谷川俊太郎さんと国際人権NGOアムネスティ・インターナショナル日本が訳した「やさしい日本語で読む世界人権宣言」では次のように表現しています。
第1条 みんな仲間だ わたしたちはみな、生まれながらにして自由です。
ひとりひとりがかけがえのない人間であり、その値打ちも同じです。
だからたがいによく考え、助けあわねばなりません。
やさしい日本語に訳された条文は分かりやすいので、私たちの権利についてより身近に感じることができるかもしれません。今年の人権週間は、「やさしい日本語で読む世界人権宣言」を通じて私たちの権利について立ち止まって考えてみませんか。
人権学習に終わりはない【11月号】
「西脇市人権教育及び啓発に関する総合推進指針」(平成13年策定)が、令和5年3月に改定されました。どんな理由があったのでしょうか。
改定された指針には、「人権をめぐる状況が指針策定当時から大きく変化し、新たな人権課題が発生しています。こうした社会の変化に対応する必要があることから、指針の改定を行います」と示されています。もちろん、社会が変わっても、取り組み続けなければならない人権課題はあります。しかし社会が変わることによって新たに生まれる人権課題もあれば、その現われ方が変わる人権課題があることも事実です。
例えば、スマートフォンの保有率は今や90%を越えていますが、その普及は平成22年ごろからで、指針が策定された平成13年ごろは、カメラ付き携帯電話の発売が話題になるような時代でした。この時代には、少なくとも今のようなネット上のいじめや誹謗中傷は見られなかったと思われます。その他にも、令和5年末の在留外国人数は約342万人ですが、この数は平成13年時点の約2倍です。
現在、私たちは移り変わりが激しい時代を生きています。だからこそより一層、人権についても学び続けなければならないのではないでしょうか。
西脇市人権教育研究大会
- と き 11月16日(土曜日)午後1時20分~4時
- ところ 重春小学校
- 内 容 実践報告、分科会
市民じんけんセミナー
- と き 12月1日(日曜日)午後2時~3時45分
- ところ 茜が丘複合施設みらいえ
- 内 容 多文化共生についての講演(平田オリザさん)
にしわきジュニアじんけん教室【10月号】
人権教育課では、市内小中学生を対象として「にしわきジュニアじんけん教室」を開催しています。
この教室では他校や異学年の子、地域の方、さらには外国人や障害のある方など、さまざまな人と直接触れ合うことを通して、「互いを認め合い、共に生きることの大切さ」を実感し、主体的に社会へ関わろうとする意欲や態度の育成を目指しています。
例えば7月30日には、西脇市からバスに乗って、神戸市にある「阪神・淡路大震災記念人と防災未来センター」と「JICA(国際協力機構)関西」へ行き、防災と国際理解を学んできました。参加した子どもたちは、「阪神・淡路大震災のことを体感できた。震度7の揺れが想像以上に大きくてびっくりした」と防災の大切さを身を持って学んでいました。また「発展途上国への支援など、知らなかったことを知ることができた。日本はとても恵まれた国だということも知れた」といった声も聞かれ、世界に目を向けることができました。この体験を一つのきっかけに、今後さらに学び続けてくれるものと思っています。
この他にも、10月26日にはブラインドサッカー体験(16日まで申し込み受け付け中)、翌27日には、茜が丘複合施設みらいえのイベント「みらフェス」の館内イベントの一つとして異文化体験も企画しています。
今後も子どもたちが多様な体験をできるよう、本教室の企画運営に努めていきたいと思います。詳しくはホームページをご覧ください。
人権文化にあふれる社会を目指して【9月号】
8月の「人権文化をすすめる市民運動」推進強調月間中に市内各地区で開催した人権講演会は、オンライン配信にも多くの申し込みがあり、初めて人権学習会に参加された方も多数おられました。記録的な暑さの中、ご参加いただきありがとうございました。
9月に入り、今度は自治会別の人権学習会が始まります。8月の講演会と同様、長年にわたり多くの自治会で続いている取り組みで、企画と運営は自治会長と人権教育推進員が中心になり、進められています。
内容については、高齢者や男女共同参画、障害のある人、部落差別(同和問題)、子ども、ヤングケアラーなど、さまざまな人権課題を地域の実情を踏まえて毎年考えています。
学習形態は講師を招いた講演会や人権落語、手話やアイマスクなどの体験活動、DVD視聴、意見交流などが中心で、中には市内の高校のボランティア部による体験発表を計画している自治会もあります。
この町別人権学習会の開催当初から変わらない目的は、家族や隣人、地域の方々はもちろん、本人の安全安心な暮らしのためでもあり、言い換えれば、「一人一人が大切にされる安全安心なまちづくりのため」です。
出席者は40代以上の方々が多いですが、子育て世代や若年層の方々にもぜひ出席いただき、誰もが輝く魅力的で住みよいまちづくりのヒントを見つけていただきたいです。回覧や防災行政無線などで案内がありますので、ご確認ください。
今年の秋は、ぜひ自治会別人権学習会で人権感覚を見つめる時間をつくってみませんか。
この夏、人権について考える時間を職場にも【8月号】
例年8月は「人権文化をすすめる市民運動」推進強調月間です。市では、この期間に市内各地区で人権講演会や小中学生対象のじんけんポスターコンクールなどを実施しています。その一環として「働く人と職場」に焦点を当てた企業向け人権セミナーを開催しています。
「プライベートを顧みず仕事を優先する」、「病気でも休まず朝早くから深夜まで働く」など、いわゆる昭和の働き方は経済的な繁栄を支えたと評価される一方で、個人の健康や家庭生活に大きな影響を与えたのではないでしょうか。
時は令和に移り、人々の働き方に対する価値観が大きく変わっています。令和元年度実施の人権に関する市民意識調査結果によると、「働く人の人権に関して、あなたが特に問題があると思われること」については、「長時間労働が常態化して、仕事と生活の調和(ワーク・ライ フ・バランス)が保てないこと」が25.8%と最も高くなっています。
一方で、一人一人が尊重され、柔軟な働き方を進める職場は、働く人の生活の質を向上させるとともに、モチベーションや生産性を高め、組織の活性化や業績の向上が期待されます。さらに、多様な働き方を導入することで、優秀な人材をより確保しやすくなります。
~人権尊重と企業成長の両立を進めるために~
市は市人権教育協議会企業内教育部会などと連携し、企業向け人権セミナーを毎年開催しています。一人一人の人権を大切にし、誰もが輝く働き方や、働く人とともに企業・事業所も成長していける魅力的な職場をつくるため、ぜひセミナーにご参加ください。セミナーの詳細は15ページに掲載しています。
アイヌ(人間)【7月号】
皆さんは「イランカラプテ(※)」(こんにちは)や「イヤイライケレ」(ありがとう)という言葉をご存じでしょうか。これは、北海道を中心とした地域に古くから暮らすアイヌの言葉です。ユネスコの消滅危機言語(※)のリストには、国内の8つの言語が掲載されており、中でも極めて深刻な状況なのがアイヌ語です。
アイヌは固有の言語や伝統的な儀式など独自の文化を発展させてきました。しかし、明治以降の同化政策や伝統を担う人々の高齢化などにより、文化の伝承が難しい状況にあります。そんな中、アイヌ文化を積極的に発信する人たちがいます。その一人が関根摩耶さんです。関根さんは、高校3年生のころからアイヌ文化を伝えるため、ラジオやYouTubeなどで配信を始めました。「アイヌのことをかっこいいな、すてきだなと思ってもらえるような入り口をつくりたい」という思いが活動の原点だと言います。
近年、アイヌが登場するアニメや映画が人気を集め、アイヌへの関心が高まっています。しかし、昨年9月の「人権についての県民意識調査」では、特に関心のある人権問題について「アイヌの人々に関する問題」はわずか1.9% で、関心が十分とは言えません。理解を深めてもらうため、市では学びの場を提供しています。
8月26日(月曜日)に開催予定の「人権文化をすすめる市民運動」推進強調月間芳田地区講演会に関根さんが来られます。アイヌの文化を学んだり、アイヌとして生きる人のリアルな声を聴いたりする機会にしてみませんか。
※「イランカラプテ」の「プ」は小文字。
※平成21年2月発表のAtlas of Worldʼs Languages in Danger(第3版)。
ユネスコでは言語と方言を区別せず、全て言語として統一しています。
人権啓発DVDをぜひご活用ください【6月号】
兵庫県では毎年さまざまな人権課題を取り上げた啓発DVDを制作しています。令和5年度制作の「大切なひと」は、「ネット社会における部落差別と人権~誰もが一人の人間として尊重される社会の実現をめざして~」をテーマとしています。
令和2年6月の法務省人権擁護局による部落差別実態の調査では、「部落差別または同和問題という言葉を聞いたことがあるか」という質問に対して、18歳~29歳の34%が「聞いたことがない」と回答しています。このように若い年代の一部の人は、差別の不当性に対する理解が十分ではありません。動画では、差別や偏見に気付かずにSNSや動画サイトへ投稿し、他人の差別意識を助長する情報を拡散してしまうといった問題に焦点が当てられています。若い方に限らず、あらゆる世代の方々にぜひご覧いただきたい作品です。
法務省が掲げる人権課題は17項目あり、昨年は「性的マイノリティー」、一昨年はこどもの人権問題である「ヤングケアラー」をテーマにしたDVDが制作されています。
人権尊重のまちづくりを進めるためには、さまざまな人権課題について学び続け、感覚を磨いていく必要があります。人権教育課では人権教育に役立ててもらうため、啓発DVDと上映機材を貸し出しています。新たな作品を随時追加しており、市ホームページに掲載しています。人権教育のテーマに合わせた作品の推薦も行っていますので、家庭や職場、地域などの集まりの場でDVDをご活用いただき、人権問題について一緒に考える機会を作ってみませんか。
やさしい日本語【5月号】
令和6年4月、住民基本台帳に基づく西脇市居住の外国人は700人余りです。そこで今回は、私たちの会話に欠かせない「日本語」、とりわけ「やさしい日本語」について考えてみます。
平成7年の阪神淡路大震災が起こった際、ライフラインなどに関する情報が日本語と英語のみだったために、多くの外国人に必要な情報が伝わらない事態が起こりました。それを機に、災害時の外国人への情報提供手段として、「やさしい日本語」が誕生したそうです。例えば、次の文を読み比べてみると、B.の「やさしい日本語」の伝わりやすさがよく分かります。
A.容器を持参の上、北公園にご参集ください。
B.入れるものを持って、北公園に来てください。
もちろんこのやさしい日本語は、災害時だけでなく、平時においても大切です。
西脇市役所のインターネットでは、必要な情報を「やさしい日本語」で読むことができます。また、そこでも紹介しているNHKのNEWS WEB EASYというインターネットでは、複数の記事が「やさしい日本語」に書き直されており、自動音声による読み上げ機能もあります。
「やさしい日本語」のポイントは、1.一文が短 い、2.主語がある、3.敬語がない、4.受け身がない、5.分りにくい語がないなどです。この文章ももっと「やさしい日本語」が使えるはずです。ただ、完璧とはいかずとも、私たちが「やさしい日本語」を使おうとする事が、異なる文化に背景を持つ人たちとの共生につながっていくことは確かであると思います。
【参考文献】「やさしい日本語」表現辞典 庵功雄/編著(丸善出版)
地域の人権教育をリード―人権教育推進委員【4月号】
西脇市を人権文化の花咲く住みよいまちにするために、地域で活躍する方々を皆さんはご存じでしょうか。中でも中心的な存在となっているのが、「西脇市人権教育推進委員」です。
市教育委員会が委嘱する人権教育推進委員は、地域社会の人権教育を積極的に進め、市民の皆さんの人権意識の高揚を図る役割を担っています。市内に8つある地区ごとに、おおむね2人を任命。任期は1年ですが、再任を妨げていません。中には10年近く尽力されている方もいます。これまでに、100人を超える方々が人権が大切にされるまちづくりに貢献されてきました。
委員の活動は、年間を通じて多岐にわたります。例えば、地区内の定例研修会や町別学習会、毎年8月に開催する「人権文化をすすめる市民運動」推進強調月間講演会で、会の企画・運営などに携わっています。特に各地区で行う研修会では、コロナ禍を経て、グループになって参加者同士で意見交換をする機会が戻ってきました。委員はグループトークが円滑に進むよう進行役を務めたり、意見をまとめたりし、参加者の理解促進に努めています。
人権を巡る状況は時代とともに大きく変化し、性の多様性や無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)など、新たな課題も認識されるようになりました。委員は各地区での活動に生かすため、主体的に多様な研修会や講演会に参加し、自己研さんにも励んでいます。
今後も西脇市は、人権教育推進委員の方々の協力の下、人権が尊重されるまちづくりを進めます。皆さんも、人権講演会や町別学習会に参加し、人権について考えてみませんか。
この記事に関するお問い合わせ先
西脇市教育委員会 教育管理部 人権教育課
電話:0795-22-3111(代表)
ファックス:0795-23-8844
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更新日:2025年03月12日